卒業生とその進路

聴覚系の時間周波数受容野解析に向けたAdaBoostアルゴリズムのFPGAアーキテクチャに関する研究


大平 貴徳

2015 年度 卒 /修士(工学)

修士論文の概要

本研究は、生体の聴覚野における単一ニューロンの音刺激に対する反応特性を時間周波数領域で表したSTRFと呼ばれる線形モデルとし、それを推定するAdaBoostアルゴリズムのハードウェア化を検討したものである。STRFの推定を行うために様々なアルゴリズムが提案されいるが、扱うデータの量が多く計算量が膨大であり、イタレイティブな演算を必要とする。そのため汎用のPCを用いた処理ではデータの取得と同時にリアルタイムにSTRFを推定することは困難であり、STRFを取得するためのデータの取得と解析は完全に分離されている。また、STRFに関する実験では、生体を用いているため生体による個体差や再現性といった点から、一度の実験において取得できるデータの量に限りがある。STRF推定アルゴリズムをハードウェア化し、リアルタイムにSTRFを推定できる実験系を構築できれば取得できる情報量を増やすことができ、STRFの大きく貢献する事ができる。STRFを推定するため採用したAdaBoostはboostingという機械学習のために考案されたアルゴリズムの一種である。boostingは汎化能力に優れていることから生体の機能モデルの解析に応用されており、それを生物の聴覚系のシステムを推定する際に改変したものがAdaBoostである。

本研究では採用したAdaBoostアルゴリズムに対し、2つのハードウェアアーキテクチャを提案した。そのアーキテクチャについての処理速度、メモリ量、演算器等の性能と実用の際の注意点などについて言及し、STRFを推定するアルゴリズムをハードウェア化しSTRFを取得する実験においてリアルタムな推定を可能とする装置を実現することを目的とした。