卒業生とその進路

生物の形づくりの仕組みに学んだ機能LSIの設計


鈴木 洋平

2004 年度 卒 /学士(工学)

卒業研究の概要

画像などのパターン修復処理は高度な演算を必要とするため、マイクロプロセッサやDSPの消費電力が高い。一方、生物はこれまで長い年月をかけて、体表パターンの生成や傷の修復など「形づくり」の処理を最小のエネルギーで行うよう最適化されてきた。本研究の目的は、そのような生物の形づくりの原理に基づいて、指紋や虹彩, 体模様などに見られる縞・斑点などのパターンを自己修復するLSIの基本アーキテクチャを考案することにある。

指紋や虹彩のパターンは、個人を同定する有力な手がかりとなる。近年の指紋・虹彩パターン認識技術を用いたインテリジェント・セキュリティシステムの発展は目覚ましく、汎用性の高い個人認証システムおよびインターフェースが既に商品化されている。現在の認識システムの問題は、1) 登録後にできた傷や欠損パターンに対する認識率が低い, 2) 高度な前処理と認識処理を行うため、DSPおよびマイクロプロセッサの消費電力が高い, の二点である。前者は、パターンの傷や汚れを取り除く前処理を念入りに施すことで解決できるが、それは後者の問題をさらに深刻にする。これらの問題が、今後特に需要があると見込まれるモバイル機器への認証システムの組み込みを難しくしている。したがって、モバイル機器向けの現実的な認証システムを具現化するためには、この前処理の電力消費を低減しつつ、パターンの傷や欠損を補完するLSIが必要である。また、モバイル機器に組み込むためにはシステムの小型化も必要であり、そのためには、センサ一体型の処理構造(インテリジェントセンサ化)が望ましい。そこで本研究では、生物の形づくりの原理に基づいてパターン処理を高度に並列化し、処理するパターンの画素毎に単位処理回路とセンサ(画像センサ)を搭載可能なアーキテクチャを提案した。