視線推定における黒目中心検出を行う低電力セルオートマトンFPGAアーキテクチャ
岩丸 直登
2017 年度 卒 /修士(情報科学)
修士論文の概要
本論文は、カメラから読み込んだ人間の目周辺の画像から、セルオートマトンを模 倣した並列処理により、極めて低電力に黒目中心の検出を可能にするアルゴリズムを 提案し、そのアーキテクチャの実装と性能評価に関するものである。近年、スマート グラスをはじめとする、次世代デバイスのヘッドマウントディスプレイが注目を浴び ている。ヘッドマウントディスプレイの普及に伴い、これらを操作するための手軽か つ低電力なユーザインターフェースが望まれる。没入度および利便性を高めるため従 来のユーザインターフェースであるマウスやトラックパッドではなく、発声やジェス チャなどをはじめとする新たなユーザインターフェースが提案されている。その中で も、特異な発声や動作を伴わない人間の視線をユーザインターフェースとして応用す る試みは特に活発である。加えて、ヘッドマウントディスプレイの形姿上、搭載でき るバッテリー容量には限界があることから、低消費電力で使用者の黒目中心検出を行 う必要性がある。本研究では低電力な黒目中心検出を行うために、離散的な計算モデ ルである 2 次元セルオートマトンを用いる。それぞれ「膨張」と「侵食」の 2 つの状態 遷移ルールに基づいて、読み込んだ画像の画素値を遷移させることにより、黒目中心 座標を検出することが可能となる。実装アーキテクチャにより得られた黒目中心座標 を用いて、ホモグラフィ行列による射影変換によりスクリーン座標(視線が示すディ スプレイ上の座標)を得るための視線推定回路群の構築も行った。また、実装アーキ テクチャの HDL および SRAM を元に消費電力を概算した。加えて実際の測定を行い、 視線推定の平均角度誤差を算出した。それから、先行研究群と同条件下での消費電力 および角度誤差の比較を性能評価表として示した。