バラツキ補償リセット方式のCMOSイメージセンサ回路に関する研究
加賀谷 亮
2005 年度 卒 /修士(工学)
修士論文の概要
近年、社会の情報化にともなって広帯域通信の分野が急速に発展している。比較的大きなデータ量を簡単に扱うことが可能となり、画像情報が頻繁にやりとりされるようになった。画像情報の取得機器としてはディジタルカメラが大きな地位を占め、現在ほとんどの携帯電話にその機能が搭載されている。ディジタルカメラの心臓部は、CCD またはCMOS イメージセンサであり、携帯・監視モニタ・車載用機器など各種の用途に向けた開発が進んでいる。特にCMOS イメージセンサは、周辺CMOS 回路を同時に集積することが容易であり、同一チップ上に様々な画像処理機能を盛込むことができて都合が良い。ただし、CCD と比べて素子バラツキによる固定パターンノイズや熱雑音が大きいので、その改善が課題となっている。そのため、製造プロセスの改善やCDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)などのノイズ除去法が提案され、CCD と比較して遜色のないレベルに近づいてきた。しかし、CDS法では、信号出力とリセット出力の差分を取るので、効果的にノイズ除去ができる反面、基本的に破壊読出しとなる。そのため、蓄積途中の中間画像情報を利用することは難しい。この中間画像情報を取得することができれば、蓄積中の輝度変化を読取ることが可能となり、様々な応用への展開が期待できる。
本研究では、CMOS イメージセンサの新しいノイズ除去法として、画素セル回路にあるMOSFETの閾値バラツキをリセット時に負帰還をかけて補償する手法を提案する。この手法を用いると、最小構成の画素回路上で非破壊の中間撮像データを取得できる。さらに、画素回路に任意の電圧を書き込めるので、高解像度を維持したまま機能的な画像処理への応用が可能となる。