ソフトウェアの価値をハードウェアの世界へ
本村 真人
2019 年度 東京工業大学へ異動 /教授
研究の概要
モバイル機器や環境に埋め込まれたセンサなどの低電力化/高速な情報処理の実現、およびビッグデータを扱うクラウドコンピューティングにおける高速・低電力な情報処理を実現するためには、SoH(システムオンハードウェア)の技術が今後ますます重要になります。そこで、回路設計技術を足場として、ハードウェアとソフトウェアの境界領域(技術的にもホットな領域)において、それら領域を横断する以下のようなSoHの研究開発を進めています:
●極低電力・高性能プロセッサアーキテクチャ
バッテリーレスで半永久的にセンス情報を発信し続ける次世代の超小型知能センサに向けて、低電力性と高性能とを両立したプロセッサのアーキテクチャを研究しています。演算器間で直接データを受け渡すことで、従来型プロセッサから無駄な動作を省いて演算効率を上げる「連鎖型データパスプロセッサ」や、次世代の不揮発メモリをプロセッサ内で活用するアーキテクチャの研究を進めています(ルネサスと連携)。●反射型情報処理アーキテクチャ
多数のセンサから送られてくる大量のストリームデータを一手に裁くクラウド側では、瞬時にデータを判別・分類・加工する「反射的」な情報処理が求められています。ところが、従来型CPUのベースとなっているノイマン型アーキテクチャは、より深い情報処理を想定して過去に発想されたものであるため、このような新しいニーズにはあまりマッチしていません。そこで、ハードウェア構成を自在に切替えられる「リコンフィギュラブルハードウェア技術」をベースとして、近未来に相応しい新しい「反射型情報処理アーキテクチャ」とそのシステム適用にチャレンジしています。●3次元集積化アーキテクチャ
近年、LSIの集積度を更に高める三次元集積技術(LSIを縦積みすること)が注目されています。そこで、世界最先端の三次元集積技術を有する慶應大学と連携して、三次元化効果を最大限に引き出すことを目指したLSIアーキテクチャとその利用技術の研究を進めています。具体的には、(1)イメージセンサとイメージプロセッサを三次元集積化して従来にない高速撮影・高速イメージ処理を実現するイメージングシステム(知能システム研と連携、STARC共同研究)や、(2)ロジックアレイLSIを縦積みすることで大規模な三次元ロジックアレイを実現する技術などです。●柔らかいハードウェアアーキテクチャ
今後の情報処理技術は、ソフトウェアとハードウェアがより融合する方向に進化していき、普通のプログラマが高位言語を使ってハードウェアを直接プログラムしたり、巨大なプログラムがハードウェア上で直接実行するようになっていくと考えています。このような時代に向けて、画像処理(ノイズ除去フィルタ等)やストリームデータ処理を題材として、ハードウェア向きの処理アルゴリズム、ハードウェアプログラム実行方式、ハードウェアアーキテクチャの研究を進めています(NECと連携)。