線形動的システムの発散特性を利用した微小信号検出手法に関する研究
山川 綜一郎
2023 年度 卒 /修士(情報科学)
修士論文の概要
本研究は、神経系の構造をCMOS集積回路上に再構築しその応用を開拓するニューロモルフィック工学とは逆の視点をとり、神経系のCMOS集積回路そのものを適応させるためのインターフェース技術に関するものである。また、インターフェース技術は刺激器と測定器に分けれられるが、本研究は測定器に関するものである。
近年、人工知能(AI)の応用先は多岐にわたるが、その中でも人間の脳自身にAIを直接使用させるというコンセプトが注目を集めている。それは脳の一部をAIと置き換えることで一部の脳機能の向上を図るものであり、後天的もしくは先天的な脳機能障害からの回復も期待されている。このようにAIを脳自身に使用させるためには、脳とAIを繋ぐインターフェースが必要となり、具体的にはAIの出力を脳へと渡す刺激器と、脳の神経活動情報をAIへと渡す測定器である。当研究室では刺激器の実現には至っているが、測定器は未だ実現できていなかった。また、既存の測定技術も高精度な測定を目的として設計されており、頭蓋骨の中に埋め込むほどの小型化はその測定手法上難しい。また、測定手法の中には測定時に測定対象にダメージを与えてしまう侵襲性を備えているものもあり、一度埋め込んだ後は長期間の使用を前提としている目的ではこの特性は適さない。よって、頭蓋骨の中に埋め込めるほどの小型化が見込め、かつ非侵襲性を備えた測定手法を提案し、その実装を試みた。提案した手法はわずかな電位変化を周波数の変化に変換することで検出するというものである。小さすぎて観測不可能な電位変化を、観測可能な周波数帯の変化に変換することを考えている。これは線形動的システムの発散特性を利用して実現できると考え、数値シミュレーションおよび回路への実装を行い、実装した回路を用いて原理検証を行った。
原理検証は回路素子のみを用いた簡単なものから、実際の生体により近いナマモノ(アルギン酸ゲル膜)を使用したものや、ラットの脳神経の培養細胞を使用したものなどで行った。
これらの実験を通し、提案手法の有効性やその範囲、集積化実装する際の課題を示すに至った。
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